妙君の報告書(全文掲載)

妙君の報告書(全文掲載)

最初に

目指すA家は、深い森の奥にあると、私はどういうわけか、最初から知っていた。そして、その森は、原始の森のようなイメージということも、知っている。次第に緑の匂いが濃く漂ってくることからも、それがわかる。
苔の匂い、濃い緑のベールに包まれたような空気。ここはもう、別世界だなと思いつつ、私は進んでいく。
A家は、ある巨木が目印だよと、森の木々がささやき始めた。その目印は、わかる者にはわかるし、わからない者はいくら教えられても見つけられない類のもので―その大木に近寄って、初めて浮き出てくる。
難なく見つかった、ドアを開けると、Aさんと猫君たちの姿があった。
見た途端、私は、家族!と感じる。

この家族は、種を超えた一族という形容がピッタリで、人間の家族と同じように暮らしているのだ。

私の意識の中に鮮明に浮かんできたのは、上記した一連の映像。ちなみに、みなきちんとした洋服を着てキッチンテーブルに座り、豊かな(ここで言う豊かは、採れたてで汚染されていないという意味)食事を、楽しく談笑しながら味わっていた。

私は、1番と書かれた封筒から写真を出す。妙君の名前を呼ぼうと思った瞬間、手を上げて彼がすっと立ちあがった。(もう、お姉ちゃんから聞いているよ)
その声が心に直接響くと、香箱組んで椅子に座る、写真そのままの妙君が目の前に座っていた。
穏やかで優しい。そして、とても大きな魂の持ち主というのが伝わってくる。
妙君は座ったまま、静かな口調で言った。「僕は、あまり自分から行くタイプではないんだ(相手の行動を受けて、それにゆったりと返すイメージ)。だから気にせず、話を始めてくれていいんだよ」

質問 ご飯は気に入っていますか?

「お姉ちゃんがいいと思うものなら、僕はそれでいいんだ。こんな風に言うと、まるで僕に好みがないように思うかもしれないけれど、そういうわけではないよ。(彼の食欲は旺盛)お姉ちゃんが、僕たちのために一生懸命やってくれているだろう。そのことが何よりうれしいし、さっきも言ったけれど、僕はどんなことでも、頭から拒否したりしない性分なんだ。言い方を変えれば、提示された物の中からチョイスし自分の意見を織り交ぜて、僕のやり方を作っていくのさ」
妙君はもともと、ご飯の好みが激しいタイプではないようだ。ただ、好きなドライフードがあったようで、最後にポツっと、こう言った。
「でもたまに、固いものを食べたくなるかな」(手作りご飯といっても実に多種多様ですが、映像として見えたのは、赤や黄色やグリーンの温野菜、粟や玄米のようなご飯と柔らかいものが多かった。その反動で固い、ポリッとしたものも食べたいのかも)

質問 何かしてほしいことはありませんか?

今の生活にほぼ満足している気持ちが伝わってくるのと同時に、私自身が、妙君は自分からこうしてほしい、ああしてほしいというタイプではないなと、もうわかっている。(でも敢えてという感じで、聞いてみた)
すると、日向ぼっこしながら、あごや頬を撫ぜてもらってうっとりしている場面が浮かんできた。穏やかで静かな雰囲気。突然そこに誰かが割り込んでくる(多分シー君)妙君は、ちょっとムッとした顔をするが、彼に場所を譲って、自分は違う所へ行く。

こういうことが、日中猫だけの時間にも多いという声が、妙君の内側から聞こてくる。続いて、一人静かに思索にふける妙君の姿が見えた。

蓮君とシー君から離れ、一人でゆっくりできる小さなコーナーやスペースを作ってあげることをお勧めしたい。(そのコーナーを作ったら、妙君専用のコーナーだから、他の2人は、そっとしておいてあげてねなど・・・説明してあげると、更に良い) 

質問 妙と私は、前世で会っていますか?

やれやれ困ったなという感じで、肩をすくめてみせる。(娘が最近はまっている流行りものに、苦笑する父親のイメージ)
「前って言っても、僕はずーっと変わらず僕なわけだし・・・」後ろ足で耳をかき、伸びをする。「違いと言っても、身体の中に居る時と居ない時の差があるだけで」再び座って香箱を組む。 (僕たちが、何度も何度も会っていること、本当はお姉ちゃんもわかっているのに。今回だって、僕がお姉ちゃんの元へ来ることは当然というより必然だったでしょう。そんな風にして、合って来たじゃないか。)
なにか明確な回答がほしくて、私は食い下がってみた。「それはわかりました、でも、印象深かった関係とかシーンを、どうか一つ見せて下さい」

すると、突然目の前に、一面緑で起伏のある、小高い山合いの風景が広がった。青年と犬が、とても楽しそうに走っている。青年は茶色い髪と青い目、犬は大型で毛足が長い。単に飼い主と犬という間柄ではなく、一緒に仕事をしていたようで、突然の別れがあったとわかる。なので今回は、穏やかに長く一緒に居たいと思うよという、妙君の声が響いた。

質問 私になにか、メッセージを下さい

「これからお姉ちゃんは、どんどん変わっていくよ。今までと違う人、違う物、違う考えと出会って、めまぐるしく(Aさんの内面が)変わっていく。お姉ちゃんには、人とは違う自分のリズムがあるから、一時にたくさんのことがあると、引き出しの中がいっぱいになって、処理しきれないって思う時があるかもしれないけれど。(Aさんは以外に早とちりでおっちょこちょいの所もあるのかな・・・そういうイメージも同時に送ってくれた) お姉ちゃんには、僕がついているから大丈夫だよ。いつもどんな時でも(たとえそばにいなくとも)僕が見守っているからね」

言い終わると、今日は随分喋ったという顔になって、急に黙ってしまった。それでも何か言い残した感が漂っているので、聞いてみた。
「もういいの?他に言っておきたいことがあったら、お姉ちゃんに伝えますよ」 妙君の顔が照れたようになって、下を向きました。そして、ボソッと呟きました。「大好きだよ」

以上ご報告いたします