コミュニケーション実例集

ピンキーさんとのコミュニケーション

ピンキーさんについて

ピンキーさんと出会ったのは、Kさんが看護師として勤務する動物病院でした。当時2歳だったピンキーさんは、院内にあるペットホテルへ預けられていました。

ところが、予定日を過ぎても飼い主さんが迎えに来ません。
飼い主さんは、20代後半の男性で1人暮らしとのこと。仕事の都合かと思い、何日か待っていましたが、迎えに来ません。

病院から連絡を入れたところ、「明日迎えに行く」と言います。ところが、翌日になっても迎えに来ません。また連絡を入れると、迎えに行くと言い、来ない・・・その繰り返しで、2か月が経ってしまいました。

途中から、迎えに来る気がないことを皆感じていたので、このまま院内に置いておくのは可哀想ということになり、相談した結果・・・当時怖がりだったピンキーさんが、一番心を許しているKさんに決まりました。

その後、元の飼い主と院長が話すことができ、意思を確認したところ、やはり引き取る気がないと。Kさんは自宅に連れ帰った時点で、元の飼い主が後で何か言ってきても、絶対に返さないという強い気持ちがありましたが、この時点で、正式にKさんのピンキーとなりました。(当時はピッピという名前でしたが、この時ピンキーに改名)

それから2年、実家でご両親と同居していたKさんは、ご主人と2人、新居へ引っ越しました。それまでは、実家の犬シナモン(11歳ミニチュアダックスフンド)小町(2歳 柴)と共に暮らしてきたピンキーさん。前から気になっていたことがあるのと、Kさんが出産をひかえていることについて、ピンキーさんの気持ちを聞いてみたい。新居に移ったことを機に、コミュニケーションを申し込まれました。

写真を見ただけで、優しい性格とわかるピンキーさんですが、不安、自信のなさ、胸に秘めた複雑な思いがあるようです。一体、どんなことを話してくれるのでしょう・・・

ピンキーさんとのコミュニケーションご報告より抜粋
ピンキーさんの印象
本来の気質→賢くて愛情深い。とても繊細で優しい。自分の容姿や性別に対して、こだわりと誇りがある。 今現在の気質→真正面から見られるのが嫌、怖がり、慎重、自信のなさ。嫌われたくない、悲しい思いをしたくない。自分の素直な気持ちの表現に、ブロックをかけてしまう。(前の飼い主さんとの別離及び、その悲しい体験を通して芽生えた感情からきている)
質問 我が家の子になって、今は幸せに暮らせているのか?
「とても幸せだけれど、シナモンちゃんに余り会えなくなって淋しい」 (K家に来た当初、心に深い傷を負っていたピンキーさん。そんな彼女を、シナモンちゃんが優しく慰める映像を見せてくれる。すぐに彼女の境遇や悲しみを理解して、何も聞かず慰めてくれたシナモンちゃんに、とても感謝している) 「ピンキーさんが感謝していること伝えるよ。もう少し頻繁に会えるといいね」 頷き、控えめな面持ちで続きを話してくれる。 「私が来たことで、お姉ちゃんに無理をさせてしまっている気がするのだけれど、これから先、私はお姉ちゃんと、ずっと一緒にいていいのかな?」(まだ、確信が持てない不安感プラス、Kさんの身辺に、変化という点で、大きなことばかり続いたもので、自分の存在が、Kさんに負担をかけているのではないか・・・と、心配している) Kさんに対しては、動物病院のケージから抱っこして出す映像と共に、感謝の気持ちをたくさん送ってくれた。 病院では皆いい人だったけれど、ピンキーさんに接する度、可哀想!可哀想!という感情と言葉に満ちていて、善意なだけに、彼女自身、余計辛かったようだ。 Kさんだけは、優しい!賢い!というピンキーちゃん本来の資質にも目を向けてくれ、それが嬉しかった。また、撫ぜて慰めてくれる時、とても安心で気持ちが和んだ(置いていかれた自分の境遇を、その時は忘れていられた)
質問 昔の飼い主の事は、どう思っているのか?(昔の飼い主に似ている人を見ると吠えるもので)
女の子は、人間同様お喋りが多いが、ピンキーさんは自分の胸の内を余り語らないほうだった。その中でも、この質問には、ほとんど喋らなかった。代わりに、胸に仕舞い込んできた感情が、一気に流れてきた。 質問したと同時に、前田の胸が痛くなる(正にハートが痛い)ギューッと締め付けられるような痛みと共に、悲しさと切なさで涙が溢れてくる(夜間、ケージの中でどうして?なんで?と自問自答しているピンキーさんの映像が見えてくる) ピンキーさんが見せてくれた前の飼い主さんのイメージは、男にしては線の細い、生活感や存在感の希薄な人。その時々の思いつきで行動する、一貫性に欠ける―それでも、ピンキーさんにしたら親であり、たった1人の家族だった。嫌いになどなれない。(今でも愛着があるというわけではない) 一緒に暮らしていたころ、とても辛抱強く帰りを待っている姿と、いい子でいるよう努めて振舞う姿が見え、健気で胸が熱くなる。 院内で飛び交う言葉や思いも(みな善意なのですが)、ピンキーさんにとっては更に傷を深める要因になってしまった。 「皆が言うように、自分は置いていかれたのだ。どうして私は捨てられたの?私のどこがいけなかったの?お兄ちゃんは、ひどい人みたいだ。でも私にとっては大事な家族だったのに・・・」 上記のような思いを、病院で過ごした2か月間、ピンキーさんは来る日も来る日も、自問自答していた。その気持ちは、出口のないまま、いまだにくすぶっている。飼い主さんに似た人を見ると、その日々にフラッシュバックしてしまい、「なんで?なんで?どうしてなの?」と、吠えてしまうのだった。
質問 私が現在妊娠中で、5か月後に出産予定だが・・・赤ちゃんが生まれても一緒に子育てしてくれるかな?
「私でいいの?」遠慮がちな口調ながらも即座に答えがあり、嬉しそうな気持ちが伝わってきた。 聞き手の私も嬉しい気持ちで質問できたのと、ピンキーさんにとって、大変いいチャンスだという思いが湧いてくる。 今から、「あなたに、人間の妹(弟)が出来たよ。○月になったら、来るからよろしくね」そう伝えてあげるといい。 赤ちゃんが来たら、小さな仕事をピンキーさんにしてもらう。 例「お母さんお掃除するから、赤ちゃん見ていてね」 そして、出来ても出来なくても、必ず誉めてあげる。 例「ピンキー、手伝ってくれてありがとう」「ピンキーがいてくれて、助かった」 こういう小さな積み重ねで、ピンキーさん自身が自分の存在価値を見出し、自信を取り戻していくことに繋がっていく。 Kさん夫妻の元へやって来たのは、偶然ではない。ピンキーさんが自信を取り戻し、自分の価値を再構築し、希望を持って生きていくためにやってきた。 今のピンキーさんにとって大事なことは、過去を否定しない。彼女の辛い過去は、賢くて愛情深いピンキーさんを形成する大事な出来事だったと言って、認めてあげること。 そして全てを丸ごと受け止め、「家の子になってくれてありがとう。ピンキーは私たちの誇りだし、どんなピンキーも大好きだから、安心してね。生涯ピンキーを離さないし、私たちはあなたを守りぬくよ」と、繰り返し声に出して言い、約束してあげてほしい。 元の飼い主さんに似た人を見て吠えてしまう時の言霊は、下記に。大事なポイントは、以前の飼い主さんを否定しないこと。 「元の飼い主さん(名前がわかれば名前を言って)は、ピンキーが嫌になったわけではなくて、仕方ない理由があってお別れしたのだよ。今でも、ピンキーのことを思っているからね」ピンキーさんを抱きしめるか、しっかりアイコンタクトして、「でも私たちは、元の飼い主さんに負けないくらい、ピンキーのことを愛しているよ」
お姉ちゃんこと、Kさんの感想

この度はお世話になり、ありがとうございました。結果を聞いて、もう驚きの連続でしたが、思い当ることばかりです。おかげさまで、ピンキーのこと、いろいろ知ることができました。

昨日も今日も、ピンキーのこと思うだけで、健気で優しい気持ちに涙が出てしまって・・・ピンキーにも早速、お話しました。その時も、じっと話を聞いてくれて、でも、途中で私が泣いてしまうと、涙を舐めてくれました。

元の飼い主さんのことも、ちゃんと話ししました。置いていかれたのに恨んでいなかったのですね。動物の心は凄いです、改めて驚き、感動しました。

今回、前田さんと出会えたこと本当にありがたく思っています。
このことを知らなければ、ずっとずっと、ピンキーに前の飼い主さんのことを言い続けていました。

ここから下は、Kさんが出産されてからの感想

私に娘が生まれて半年経ちましたが、一緒になって子育てしてくれて、添い寝したりもしてくれます。
出産後の生活も心配でしたが、前田さんにみていただいた通り、何の心配もいりませんでした。

ピンキーの気持ちを知ることが出来て、本当に助かりました。ありがとうございます。

前田のコメント

ピンキーさんのセッションは、「動物も私たち人間と同じ心を持っている」そのことを如実に示してくれる、貴重なセッションとなりました。

このセッション結果を、たまたま会った、知人の専門家(精神科医)に見てもらったところ、心に傷を負った子供への対応と酷似した点に、驚嘆の声をあげていました。

愛犬家の1人として、真剣な顔でこうも言いました。「本当に、言葉がわかるのだね。僕は今までマルに、ずいぶんひどいことを言ってきたかもしれない。家へ帰ったら、早速謝らなきゃ」

彼のように思ってくれる人が、動物の医師をはじめ動物に関わる全ての人の中に、広まり浸透していくことを、切に願います。

コミュニケーターの1人として、伝える努力の重要性を再認識したセッションでもありました。

過去の経験を糧に、今誇りと喜びを持って暮らす、ピンキーさん。
これからも、愛の光に包まれて、Kさんと共にお幸せに!