コミュニケーション実例集

シャム子さんとのコミュニケーション

シャム子さんについて

猫の保護仲間でもあるNさんから、久しぶりに連絡があった。引っ越しを知らせる葉書だった。
「引っ越してすぐ、また新たな猫と出会ってしまいました。ご飯だけは近所の人に貰っていたのですが、まあ、色々ありまして・・・今猫は、我が家に。年齢不詳で、見た目はシャム猫そのもの。名前はさくらが(娘さん)つけたもので、見たまま「シャム子」です。かなり高齢と病院で言われ、腎機能の数値も悪いので、そのうちコミュニケーションお願いするかも。」

文章を一通り読み終わらないうち、私はシャム子さんのことが気になりだしました。
気のせいかと思って葉書を裏面にしておきましたが・・・葉書の側を通るたび呼び止められた気になるもので、Nさんに連絡したところ、丁度私に連絡しようと思っていたと。

急きょコミュ二ケーションをすることになりましたが、お話してみると、旅立ちを前にしたシャム子さんの、感謝と愛情に溢れた話が始まりました。
ですます調の喋り方は、シャム子さん独特のもので、人間に例えるなら、お公家さんのような品の良さが際立つ。そんな猫さんでした。

シャム子さんとのコミュニケーションより抜粋
N家の猫になる前、お世話してくれていたお家の人に、あなたが元気にしていると伝えたいですか?
ややしばらくしてから、消え入るような声で 「お母さんが伝えたいなら・・・そうして下さい」
そうですか。お母さんには、そのように伝えますが・・・あなたはどう思うの?
と尋ねると、気を回すと言いかけ、気を遣う人たちだからと言い直して・・・世話になった人たちのことを、これ以上言いたくないという思いが、じんわり伝わってきた。(喜びや肯定の感情は、感じられない) 前にお世話してくれていたご家庭は、もし、Nさんがシャム子さんの話しをすると「ああ、元気にしていてくれて良かった」と思う以上に、「家も何かしなければとか、家に何かしてほしいのかしら」という考え方をする人たちのようだ。 シャム子さんは顔の前で両手を合わせ、「ありがとう、ありがとう(食事をいただいて」と言うのだが、気持ちの上で深い繋がりは持てなかったとも言いたそうだ。なので、もし伝えるなら本当にさらっとご報告・・・がいいかと。 前のお家の話しを聞いている最中、チラチラと見えた映像を、参考までに記しておきます。(質問事項にはなかったので、本人に詳しく聞きだすことはしていない) いわゆるよくあるタイプの中年女性という顔立ち、小太り(そんなに老齢ではない)の女性が、がらがらと開けるタイプのベランダ窓から、食器を出している。白いお茶碗。コンクリート、遠くに林、畑も見える。 場面が変わって、黒か濃紺のセダンタイプの車から、シャム子さんが突然降ろされ、困惑している―その時見えた手は男性で、シャム子さんは男の人が苦手(その場に、放置された)という思いが伝わってくる。
報告書の全文掲載
※お客様に許可をいただき、報告書を下記に全文掲載しています。
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Nさんの感想

この度は、シャム子のコミュニケーションを通して、いつも以上に、大変お世話になり、ありがとうございました。

あれから泣きっぱなしなもので目がふやけたみたいになっているのですが、とにかく感想をと思って書いています。支離滅裂な箇所ございましたら、すみません。

シャム子のコミュニケーションお願いした2~3日前から、シャム子はカタカタと音をたてるかのごとく、調子が悪くなっていました。

なのに、前田さんからコミュニケ―ションが終了したというメールを昼間いただいて、夕方帰宅した時、まずシャム子の顔を見て驚きました。

今まで見たこともないほど穏やかで、すっきりした表情だったのです。

急いでパソコンを開き、報告書を拝見し、もう涙、ただただ涙でした。

今まで疑問に思っていたことが全て繋がりました。世話してもらっていた家の描写は、見に来ましたか?と思えるくらい当たっていて、さくらに読んできかせながら、笑ってしまったほどです。

さくらとのことも驚きでしたが、もうすごーく納得しました。そして、何より、シャム子がこんな風に私を思っていてくれたことに対する驚きと感動といったら、なんて例えればいいのかわかりません。

シャム子は、言いたかったことを全て前田さんに聞いてもらい、もう思い残すことなかったのですね。

静かに、昨日旅立っていきました。コミュニケーションしていただいてから、3日目でした。

前田さんのおかげで、私はシャム子に、心からのありがとうを伝えられました。また会えることも知って、約束も交わしました。

今までたくさん猫を送ってきましたが、こんなに充実した看取りははじめてです。

多くの方にシャム子のコミュニケーションを読んでいただき、どうぞ役立てて下さい。
これからもたくさんの猫たちの通訳になってあげてくださいね。

動物の心の深さを目の当たりにして、上手く言えませんが、人生観が変わりました。
本当に、ありがとうございました。

前田のコメント

動物も人間と同じで、実にさまざまな個性があって、喋り方や口調に、その内面が反映されます。
シャム子さんの丁寧なですます口調は、初めてのことで、私も驚いたものです。

話す内容の深さにも、また驚きました。

「お母さんの愛情と献身に、私はただただ感謝をしています。生きていて良かったと心から思って死ねることくらい、幸せなことはないのですから」

こんな心境で旅立っていく人間がどれほどいることかと思うにつけ、素直に頭を下げたくなります。

全ての動物が、同じ飼い主さんの元へ戻るとは限りませんが、旅立つ直前にコミュニケーションすることになる動物さんの多くが、また戻ってくると言います。

そういう思いを、ただ伝えたくて―依頼されるのは飼い主さんですが、繋げてくれたのは動物自身―そういうひたむきな思いも伝わってくるもので、尚更胸打たれるのです。

Nさんとシャム子さんが、再会した後、またお話できる機会を楽しみに、しばしのさようなら。